愛玩動物看護師
国家試験結果
合格発表:2023年3月17日
必須問題については必要な補正を行って算出した得点の70%以上、かつ実地問題及び一般問題については必要な補正を行って算出した合計得点の60%とした。(財)動物看護師統一認定機構HPより
総合
受験者数
20,798名
合格者数
18,481名
合格率
88.9%
既卒・在学者
既卒者・在学者:愛玩動物看護師法附則第二条第一号
受験者数
11,259名(54.1%)
合格者数
9,712名(52.6%)
合格率
86.3%
養成所別(九州沖縄)
学校名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
宮崎ペットワールド専門学校 | 115名 | 105名 | 91.3% |
福岡ECO動物海洋専門学校 | 228名 | 181名 | 79.4% |
九州動物学院 | 127名 | 100名 | 78.7% |
沖縄ペットワールド専門学校 | 109名 | 84名 | 77.1% |
専門学校福岡ビジョナリーアーツ | 296名 | 227名 | 76.7% |
専門学校九州スクール・オブ・ビジネス | 120名 | 84名 | 70.0% |
大学別(全国)
学校名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
日本獣医生命科学大学(東京都) | 738名 | 723名 | 98.0% |
九州保健福祉大学(宮崎県) | 44名 | 42名 | 95.5% |
ヤマザキ動物看護短期大学(東京都) | 146名 | 139名 | 95.2% |
酪農学園大学(北海道) | 243名 | 231名 | 95.1% |
倉敷芸術科学大学(岡山県) | 151名 | 140名 | 92.7% |
岡山理科大学(岡山県) | 44名 | 40名 | 90.9% |
ヤマザキ動物看護大学(東京都) | 490名 | 428名 | 87.3% |
帝京科学大学(東京都) | 406名 | 347名 | 85.5% |
千葉科学大学(千葉県) | 32名 | 27名 | 84.4% |
ヤマザキ動物看護専門短期大学(東京都) | 110名 | 81名 | 73.6% |
東亜大学(山口県) | 13名 | 6名 | 46.2% |
現任者
現任者:愛玩動物看護師法附則第二条第二号
受験者数
9,539名(45.9%)
合格者数
8,769名(47.4%)
合格率
91.9%
予備試験結果
予備試験合格状況
合格発表:2022年12月1日
受験者数
9,841名
合格者数
9,793名
合格率
99.5%
※必須問題及び実地問題について、必要な補正を行って算出した総合得点の60%とします。(財)動物看護師統一認定機構HPより
認定動物看護師登録者数
30,522名
受験合格率
32.1%
※認定動物看護師登録者は2022年11月1日時点の数
予備試験受験状況
講習会修了者数
14,733名
受験者数
9,841名
受験率
66.8%
※愛玩動物看護師指定講習会修了者は2022年9月1日時点の数
講習会・試験概要
指定講習会
予備試験~国家試験
法律の制定と施
※内容とイメージは関係ありません。
- 2019年(令和元年)6月21日
- 「愛玩動物看護師法」成立
- 2019年(令和元年)6月28日
- 「愛玩動物看護師法」公布
- 2019年(令和元年)12月1日
- 「愛玩動物看護師法」の一部施行
- 2020年(令和2年)2月27日
- 一般財団法人動物看護師統一認定機構を「指定試験機関」に指定
- 2022年(令和4年)5月1日
- 「愛玩動物看護師法」の完全施行
動物病院側の注意点
1.法律の厳格化
愛玩動物看護師法の施行により、今までは「獣医師法」「獣医療法」しかなかった世界に、新たな「罰則を伴う法律」が入ってくることになります。
すでに運用されている所もあると思いますが、個人病院でも「就業規則」などを整備・確立する必要性が出てきました。
(※就業規則は不備が無いよう専門家に監修してもらうことをお薦めします。)
2.表現の厳格化
自院HPのスタッフ紹介や求人ページ(サイト)等で「動物看護師」という言葉(愛玩動物看護師に似た紛らわしい職種表現)が一切使えなくなります。
ホームページや求人サイトに職務名として記載している場合は、今年4月末まで(経過措置6ヶ月間)に修正が必要です。
(※認定動物看護師の名称使用も施行後6ヶ月間が猶予期間とされています。)
受験資格
用語解説
1.大学で主務大臣が指定する科目を修めて(施行日前に)卒業した者
主に獣医学部がある大学に設けられている3~4年制の「獣医療(動物医療)看護」系学科・コースを卒業された方を指します。
2.養成所で愛玩動物看護師として必要な知識・技能の修得を終えた者
新たに定義明文化され、都道府県知事の指定が必要になる「養成所」を卒業した方です。
恐らく「養成所」として指定される(された)教育機関は、すでに3~4年制の看護系学科・コースを持つ学校か、既存学科・コースを改編できる学校でしょう。
新規の「養成所」認定は、施行日までに申請する必要があり、既存の「2年制動物専門学校」が単独のままでは対象になりません。
3.愛玩動物看護師の業務に係る実務経験を5年以上有する者
文字通り(専門学校を含む)5年以上、動物病院などで働いている(働いていた)方を指します。
現時点の割合では、圧倒的に「2年制の動物専門学校を経て動物病院に就職している方」のほうが多いと思われます。
動物看護師統一認定機構の「認定動物看護師」資格がある方に関しては、特例(未就学者)として「主務大臣が指定する講習会の一部減免」が検討されているそうです。
受験の実態
◎認定動物看護師[登録者数]27,720人(2022年3月1日現在)
●事前情報[登録者数]13,695人(2022年3月31日現在)
⇒【事前登録割合】約49.4%
認定動物看護師の登録がある方のうち事前登録の割合からも、最終的に国家試験まで挑戦する方は全国で多くても数千人+αくらいだと思われます。
実際、2年制動物専門学校卒の割合が多いと思われるため、いくら講習会を減免しても予備試験~国家試験までクリアできる人数は、かなり少なくなるでしょう。
ちなみに講習会・予備試験は、2022年(令和4年)5月以降に実施され、当年を含む5年間限定で年1回実施される予定です。
講習科目 | 16時間コース | 26時間コース | 20時間コース | 30時間コース |
愛玩動物看護師の職責 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
獣医療及び愛護適正 飼養分野の関連法規 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
診療の補助に関する技能 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
愛護・適正飼養に関する 基本的な知識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
業務の実践に必要な理論 | 〇 | 〇 | ||
業務の実践 | 〇 | 〇 |
まとめ
今回、新しく国家資格の「愛玩動物看護師」職が誕生することになります。
しかし、動物病院や獣医療機関が「愛玩動物看護師しか雇用してはいけない」「愛玩動物看護師を雇用しないと診療できない」というわけではありません。
当面、大部分の動物病院・獣医療機関は、今までと変わらず2年制動物専門学校や一般から雇用しなければならない状況が続くでしょう。
国家試験を受験できる人
① 農林水産省・環境省による科目確認済大学(3年制以上の認定済み大学)の在校生・卒業生
② 都道府県知事指定を受けた養成所(3年制以上の動物看護専修学校など)の在校生・卒業生
③ 動物専門学校+動物病院等で5年以上実務経験がある人(ただし施行年より5年間のみ)
受講・受験が必要な内容
①【A】施行前に卒業→[講習会]+[国家試験]【B】施行後に卒業→[国家試験]
②【A】施行前に卒業→[講習会]+[国家試験]【B】施行後に卒業→[国家試験]
③[講習会](30時間コース)+[予備試験]+[国家試験]
対応業務
補助と医療行為
愛玩動物看護師は、医療行為である「採血」「経口投薬」「マイクロチップ挿入」「カテーテル採尿」ができることになるようです。
しかし、それらの中でも「採血」や「カテーテル採尿」は、ベテラン獣医師でも非常に神経を使う医療行為の一つです。
実際の現場では、相手が動物で既に体調が悪かったり、体格差があったり、動いたりするため、学校での実習通りにはできないことが多くなります。
獣医師の指示の下とはいえ、ずっと見ているわけにはいかない為、不要なケガや甚大な医療ミスが多発することが十分予想されます。
結局、好条件で採用した愛玩動物看護師が現場に入っても、対応する(させられる)業務は「これまでとあまり変わらない」という結果も想像できます。
逆に獣医師側が「資格あるんだからやっといて」など、軽率な指示・監理をする場面も想像できるため、利用する側(飼い主様)も注意して動物病院を選ぶ必要があります。
獣医業現場の現実
今後の動向予測
1.業界から動物看護師という職種が短期間で完全に消滅する。
2.何となく動物看護師として働いていた人が徐々に辞め始める。
3.人材を確保できず、動物病院が「深刻な人手不足」になる。
4.大所帯の動物病院から体制や経営が縮小されて不安定になる。
5.動物病院にも独自の「人材育成(教育)能力」が求められる。
6.従業員の能力格差や世間の評価が二極化し、明暗が分かれる。
従事者の未来予想
早ければ来年(2023年)には、大都市圏・大型動物病院から「愛玩動物看護師」が臨床現場に入り始めます。
その後は「新しい国家資格」として注目を集め、該当校の入学希望者および受験者数が一時的に増えると思われます。
ただし、受け入れ側の動物病院や動物関連業も、相応の雇用条件や労働環境の改善がなければ、一部に集中・停滞が続く可能性もあります。
近い将来「愛玩動物看護師もしくは目指す人」たちが「旧動物看護師」に代わり、現場の「中核的存在」になることは間違いありません。
その拡がりと同時に、今まで通用してきたであろう「アバウトな雇用や運営」の動物病院が就職希望者から敬遠され始めます。
複数のスタッフを抱える現場では、一種の「ヒエラルキー」とも言える明確な組織体制(見直し)が求められるでしょう。
今回の流れにより、今まで居たスタッフ(旧動物看護師ら)の現場を離れる動きが、全国的に派生することも十分予想できます。
相変わらず、需要に対して供給が乏しい個人動物病院では、全く知識・経験が無い一般からの採用も常態化し始めます。
本来、獣医療に携わるには「医療適性」が不可欠なため、目的意識・学習能力・心理的障害の有無等を採用時に審査する必要があります。
動物病院側に毅然とした採用基準や教育体制が整っていないと、一気に現場のレベルが下がり不要な混乱が生じると思います。
地方の個人動物病院に愛玩動物看護師が到来するには、国家資格だけに結構な時間を要するのではないでしょうか。
この先も従来の動物病院は、今まで通り「様々な問題を抱えた動専卒業生」や「稚拙な動機の一般採用者」らを待ち続けることになります。
いつまでもペットブーム時代のような「無頓着な人材確保の感覚」や「親方日の丸」のままでは、確実に「負のループ」に陥ってしまうでしょう。
愛玩動物看護師から一般まで幅広く対応できるように、いかに「独自の教育管理システム」「フレキシブルな組織体制」を構築できるかが安定運営のカギになります。